男の背中
逃げる道中、食べるものは、ボソボソとした細長いクッキーの出来損ないの様なものばかりで、不味くて涙が出た。
夜になり、森の中の闇夜を怖がり背を丸めて泣くロイドを、ガインは抱きしめ、こう言った。
「王子、このガインが付いております故、安心してお眠り下さい。己が王子を守ります。誰であろうと聖騎士ガインは、子供を傷つける者を許しません。王子を殺すというならば、国を滅ぼし、王子の国を作りましょう」
と。
強く優しく、苛烈に自分を守ってくれるガインの言葉は、どんな頑丈な城よりも安心出来る寝床を思わせた。
ロイドは、ガインに抱きついて寝た。
「ありがとうガイン。傷つけてごめんなさい」
ガインが優しく笑うのが、闇夜でも何故かわかった。
夜が明け、王城に襲撃をかける折、ガインはロイドを抱えたまま、剣、魔法、矢、あらゆる全ての攻撃からロイドを守り、さらにイェナ、コトノハら英雄たちをことごとく破った。
あまりの強さ、あまりの鬼気迫る戦いぶりに王と神殿両方が折れ、ロイドの行為の不問と王子復帰を約束し、ガインに戦いの終結を懇願した。
結局、ロイドは王家を出たが、それは自分の意思でのことだ。
命があるのは、ガインのあの、狂気じみた男気のお陰だ。
ならば、ガインと並び立つことこそが、ロイドの男の道だ。
そうロイドは思った。
「ガイン、貴様は休んでいろ」
ガインに向けて少し振り返るロイドは小太刀を抜いた。
ガインの目に映るその背中は、あの日森の中で泣いていた子供の、丸まった背中と同じ背中だとは思えなかった。
頼もしい背中だった。
「男の背中になりましたな、王子…!」
ガインの目から、熱いものが零れた。




