殺人医師が見た、魔物の生
殺されたのに、気分は悪くなかった。
敵は人ではなかったが、人以上に人らしかった。
「ゴブリンの騎士…か」
敵は矮小なゴブリンとは思えない程の屈強な肉体を持っていた。
その体躯は人並みの大きさで、しかも修道の技を使った。
男はずっと持たざる者だったが、あくまで、人の中で持たざる者だった。
親なし、貧困。
物心ついた頃には、その日暮らしだった。
だが、医術の才能が開花した。
人生が変わったが、血と家柄がある者しか進めぬ道があることに落胆し、諦めと僻みの念を抱いた。
そして敵は、魔物でありながら、後ろ楯を得て、血や家柄のさらに上を行った存在だった。
だから最初は、何が何でも殺したいと思った相手だった。
しかし敵は、誰もが認める英雄として名を馳せて尚、殺しの贖罪の為に己の命を捨てる覚悟を決めていた。
魔物でありながら、気高く、そして悲しい修道の心を持っていた。
多くの死を見て、また、多くの死を与えて、何ら罪悪感など持たず生きて来た男から見ると、敵は視野狭窄に陥って、つまらないことにこだわっている様に思えたが、本物の修道の騎士とは、修道の教えと戦いの矛盾と向き合い、自らを投げ出す覚悟を持つ者だと考える男、ジャン・ジャックとしては、正反対で相容れないはずの敵、聖騎士ガインの生き方は、赦し納得出来るものだった。
ジャン・ジャックにとってガインは、男として認められる男だった。




