さらば種よ
「何?お前、人間に恋してんのか?」
「いえ、厳密には人じゃないですね」
「そーかよ。アダムじゃないのか」
「アダムは私にとって、…ん?もう時間がないですね」
亜実が会話を切り上げる。
セオドールとダーハムが座っている木の根元の土が、塊で落ち始めている。
「もう一回会った時に教えてくれよ!アダムのこと、アミのこと!」
ダーハムの言葉。
それは、再会を約束しろ、ということ。
セオドールも続く。
「生きてたら、俺たちの街、アーマンダインに来い。その時はお前、うちのパーティーに入れ」
ぶっきらぼうだが、優しい言葉。
「やっぱり似ていますよ」
亜実の言葉に、セオドールは眉を上げ、口を真一文字に結んだ、よくわからない表情を見せた。
悪い気はしていないが、どう返答したものか、といった微妙な表情。
三人の間には、しばしの別れを惜しむ友人同士の雰囲気が流れていた。
「キャラ濃い奴しかいないから、アミ溶け込めると思うよ!〝蕀〟のダーハムって言えばカオだから来て!」
「どこがだよ。お前は俺とセットだろーが」
「それ言っちゃダメだよ!」
「…ありがとう、二人共。あなたたちを殺すのはやめるわ」
「まだ殺す気だったのかよ、バケモン」
「アミやっぱここでくたばってくれた方がいいかもねー」
「冗談よ、うふふ」
亜実の微笑みに、セオドールとダーハムも笑みを返した。
「じゃあ、お別れです」
アダムの口が開き、無数の根を放射状に広げ、蠢かせている種が、這い出て来る。
種には、人面。
おぞましい魔物だと忌み嫌われるであろう見た目だが、セオドールとダーハムにとって亜実は、ひととき修羅場を共にしつつ、会話によって距離を縮めた、仲間、友人でしかなくなっていた。
セオドール、そしてダーハムが、拳を突き出す。
「またな、アミ」
「アーマンダインで待ってる!」
「うふふ、ありがとう」
亜実は根を伸ばし、二人の拳に触れた。
そしてアダムの口から、空に向かって飛び降りて、特異点へと落ちて行く。
「本当、また会いたいですよ。セオドール。ダーハム。アダム。母さん。…有栖川くん。神気発動、邪気発動。目覚めよ我」
種である亜実の体が輝きと瘴気に包まれる。
「Xseed」
特異点は亜実を飲み込み、内側から光と闇に突き破られて、消滅した。
「アダムは任せとけ!」
「頭が痛ーい!」
「うるせー!」
「「オエエエエエエエエ!」」
亜実は薄れる意識の中、遠くなる二人の声を聞いた気がした。
そして涙を一筋流し、笑った。




