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666(セイシエンスタ・セセンタ・セイス)

突然の暗闇に軽く驚いた亜実は、空を見回す。

すると、空に赤や紫、灰色などの色が点在して現れ、うねる様に渦巻いて、しかし混ざり合うことはなく、毒々しい色彩の空を作り上げた。


アダムの息が浅い。


亜実は接続(コネクト)によって、アダムの身体能力を限界まで引き出し操れるが、内臓機能の操作の上げ幅は小さい。


それを理解している亜実は、アダムの体内に這わせた根で、肺の状態を探る。

そして、肺の動きの鈍化、萎みに気付く。

同時に、肺に穴が開いているわけではないことに安堵する。

なるべくならば、アダムに傷ひとつ負わせたくないからだ。

あの母の分身ともいうべき体は、回復魔法さえ使わずに、生まれたままの姿でいさせたいと、亜実はこだわっていた。

かといって、アダムを母のところに置いてはおけない。

安全でも、昏睡による悲しみに、母を再び突き落としたくはないし、アダムとして母の愛を受け過ぎた今、亜実は、当面アダムであることに執着するつもりなのだ。


「この肺、気圧の変化のせいでしょうか。666(セイシエンスタ・セセンタ・セイス)」


アダムの網膜には、亜実の能力ウィンドウが表示された。

他者には見えない、亜実だけが見ることが出来る、666個の魔道具のアイコンが輪の形で立体的に並んでいる様は圧巻だ。

666は、ガムドムルァの森に潜む邪神から得た能力で、666個の魔道具の中から、最大で6つまで同時に併用出来るもの。

使用回数制限もなく、何の負担も生まないノーコストというこの能力の手軽さは、亜実から謙虚さを奪い、魔族じみた不遜な性格の獲得を加速させていた。


「無呼吸呼器」


亜実が、アダムの指を使ってタップすると、口を覆う為の仮面が空中に現れる。

そしてアダムとして仮面を手に取り装着すると、仮面が口元にフィットし、はりついて、能力が発動した。


無呼吸呼器は、どんな状況下においても無呼吸で通常の呼吸が出来るという、主に水中戦用として使用する魔道具だ。

無呼吸呼器により、アダムの息苦しさは消失し、肺の萎み、そして呼吸の乱れはなくなった。

無呼吸呼器はスタミナの半永久的な持続を可能にする為、接続(コネクト)による身体能力向上と非常に相性がいい。


「さあ、これでカーディオ(電池)の減りは止まりました。先程のお二人はどこでしょう、うふふ」


暴虐の気持ちを映したかの様な、濁りにまみれた目をしている亜実だが、毒々しい景色の中に、セオドールとダーハムの気配がないことを、本気で意に介する様子はない。

アダムを安全に守れれば、亜実はそれでいいのだ。

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