曇天の暗転
振り向くと、アダムが薄笑いを浮かべていた。
屈んでいるセオドールとダーハムを見下ろしている。
アダムの手には、熊に突き立てていた、血が滴っている剣。
セオドールは生唾を飲み込み、アダムの目を見た。
日はまだ出ているが、そう天気もよくない曇天で、逆光などでは断じてない。
だが、アダムの表情は闇の中にある様に見えて、読み取れなかった。
恐慌のセオドールは、アダムの表情がまるでわからない程、アダムが少年なのか少女なのかすら判断出来ぬ程に、冷静さを欠いて怯えていた。
亜実は、そんなセオドールへ向けて、根を伸ばさんとする。
アダムの左目の両端から、根の先端が這い出るか出ないかの瞬間。
「緊縛絶叫!ギィヤァァァァ」
ダーハムが技を使ってアダムの動きを止めにかかった。
しかし亜実には効かない。
「精神系と神経系のスキルは、私には通用しませんよ、うふふ」
アダムが目を細めたのを見て、ダーハムは青ざめた。
精神神経系が効かないということは、寄生型の魔物、それも高位のものである可能性が高いからだ。
セオドールへ向けて、アダムが剣を振りかぶった。
「セオドール!避けろ!避けてくれ避けてくれ避けてくれー!」
「うるせー!」
ダーハムの声によって我に返ったセオドール。
アダムが振り下ろす剣筋を読んでかわし、飛び退いて距離を取りながら、ダーハムに目配せする。
「やるぞダーハム遅れんな!」
「おう!」
「呼吸を合わせろ!イチ!ニイ!サン!」
セオドールは、その恰幅のよさに似合わぬ、軽快な動きでバック転を繰り出す。
それは、戦闘中にリズムを合わせる為の合図なのだ。
「「異空間発生魔法!」」
空が、暗転した。




