森祭司なわけがない
「見たか?」
「見たよー」
「ずらかるぞ、あれはヤベー」
「またー?森祭司かもしんないじゃんよー」
「うるせー。あんな森祭司がいてたまるか。こえーんだよバカ」
「でもまだ子供じゃんよー」
「お前本当にバカだな。黙っとけよバカ」
「バカにバカって言われたくないよー」
汚い金髪に無精髭の恰幅のいい男と、黒髪の短髪に、刈り込まれた顎髭の痩せっぽちの男の二人が、木陰からアダムを見ていた。
二人共に着ているダボダボの服の上下は、ラップミュージックのアーティストのそれ。
セオドールとダーハムだ。
二人は並んで、アダム、いや亜実を観察していたのであった。
ガムドムルァの森は、ストラトドゥール国とレパード公国に跨がり、二人は、いつの間にか国境を越えてレパードに入っていたのだが、それに気付かず、まだ遭難中なのだ。
「何だとコノヤロー。テメー俺のこと、そんな風に思ってやがったのか。いいか、人間のふりした化けもんだぞ?あんな奴が森祭司なわけがねー。森祭司だとしても、俺が認めねー」
「そんな横暴なー。ちょっとぐらいこわくてもいいからさー、どっか街までついて行こうよー。熊肉わけてもらおーよー。でも怖いからついてきてくれよー」
「バカヤロー、一人で行け。俺はわけのわかんねー細いのを体に入れられて刺されて死ぬのはごめんだ」
「俺だってやだよー」
「うふふ、見られたからには、生かしてはおけませんね」
騒ぎ過ぎた二人の背後には、いつの間にか、亜実が操るアダムが立っていた。




