穴倉と竜
振り向くと、巨大な八ツ首の大蛇がいた。
その体躯は見上げる程だ。
「俺が食った奴か。八岐の大蛇、蛇竜ヴェドヴェド」
穴倉が喰った時は、既に首が一つになってはいたが、こんな巨大な大蛇を他に見たことなどないし、忘れるはずがない。
「その名で呼ぶナ、竜と呼ベ」
「わかった竜。俺は穴倉だ」
穴倉は、何故だか竜をすんなり受け入れることが出来た感覚をおぼえた。
竜も穴倉の存在を受け入れることが出来たのをかんじた。
「お前は魂だけの存在か、竜」
「そうダ穴倉。お前の魂に絡まって存在していル」
「俺の魂?そんなものが本当にあるのか」
「…お前はどこまでわかっていル」
「全てだ。俺は俺だ」
「…やはりナ。お前の存在はイレギュラーを模したシステム。お前はそこから外れる気カ?」
「外れる気はない。俺だけではない」
「そうカ。ならば超えろ」
「お前が出て来たということは、そういうことか」
「そうダ。お前は諦めるのカ」
「諦める気はない」
「ならばわかるナ」
「そうだな。俺は俺であってお前だ」
「そうダ。お前はもうお前ではなク、俺であって俺ではないお前ダ」
「ああ。あとは」
「お前の友を待とウ」
「俺には、あいつらと同じ過去が、あいつらと同じ過去ではない」
「だが友ダ。そういうシステムなのダ」
「悲しいな」
「同情すル」
「だが変える」
「そうだ変えロ」
「「俺はお前、お前は俺」」
穴倉は、竜と共に時を待つ。




