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影ぼうしは怖くない

上手く逃げ出せた。そう、私、ゲブ・ア・ミサは思った。魔王たちは、会話をしている分には気さくで、悪い奴らだとは思えなかったが、何と言っても魔王なのだ。あまり一緒にはいたくなかった。


だから、「ウサギ出た!」と言って逃げてみた。本当は何も出ていない。だが、こいつらの身の上話を聞いていた私は、アリスを除き、奴らにとってウサギが天敵だと知っていた。案の定、大地王は、猛スピードで転がってどこかに行ってしまったし、レインボースライムは動きが遅いながらも、茂みの中へ必死に隠れた様だった。問題は、この影ぼうしだ。


「ふー、びっくりしたでござる。」

こいつだけは私の影と一体化していて、影化して、やり過ごした様だった。影だから撒くことが出来ない。歩みを止めない私にぴったりくっついた状態のまま、影ぼうしが話しかけてくる。

「お腹、減ったでござるなあ。ミサ、何か持ってないでござるか?」

まずい、糧食はもうない。全部奴らがたいらげたのだ。特にアリスが。幸いなのは、こいつが糧食の存在を知らないことだ。

「何か、狩ろうか。」

私はアーチャー。狩りは得意だ。だから何とはなしに提案したのだが、影ぼうしは物凄い勢いで食い付いた。

「ウサギ!忌々しいウサギを倒してほしいでござる!あの悪魔の様な生物を!うわぁぁぁぁん!」

トラウマは深そうだな。

「何かお前たち、思ってたのと違うな。」

「逆に拙者たち、どんな風に思われてたでござるか?」

私は説明してやる。人間の伝承にある魔王の話を。やはり、影ぼうしだけは、寝ていて聞いていなかった様だった。

「何それ!拙者はザコモンスターって言ってたのに、あいつらは魔王!?やだやだ拙者も危険視されたいでござる!魔王って呼ばれたいでござるー!呼ばれたいのー!」

「わかったわかった。魔王魔王。怖い怖い。」

「本気度が伝わって来ないでござるー!」

ぽこぽこと私を叩く影ぼうし。痛くも痒くもない。全く害がない奴だ。何ならちょっと楽しい。これなら、糧食の話をしても問題なさそうだ。

「ぐすん…。お腹減ったでござるなあ。」

「カロ●ーメイト?の様な糧食を持っていたんだが、お前が寝ている間に、奴らが全部たいらげたよ。」

「何ですと!?あいつら~!」

「村に戻ったらあると思うから、お前にももらってやるよ。」

「もひとつ何ですと!?それは楽しみでござるなあ!いつ!?村に戻るのいつ!?」

「今から戻るから。」

「やったー!カロリーメ●ト♪カロリー●イト♪あ、ウサギいた!ミサ!奴を!奴をー!」

「わかったから。うるさいうるさい。」

「…ミサ、いい奴でござるなあ。」

…こいつとは、まあ上手くやれそうな気がしないでもないな。

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