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高木亜実の真っ直ぐな歪み

少年、アダム・グラムになりかわった高木亜実が、アダムのふりをしていたのは、母の為以外何ものでもなかった。


アリスに再び会いたい。

それ以外は全て振り切り捨て去るつもりでいたが、この母親だけは振り切る気にはなれなかった。


亜実の記憶の中に、実の母はいない。

父一人娘一人で育った亜実にとっては、アダムの母は初めて母性をかんじさせる存在だった。


アダムとして暮らすことで、母を持つ子に初めてなれた。

それは疑似的なものではあるが、亜実にとっては、息子の昏睡にやつれ切っていた母が、みるみる元気になる姿、しかし夜になると情緒が不安定になる姿を見せることに、心を掻き乱された。


だから毎夜、一緒に寝た。


すると不思議なもので、母は日に日に情緒が安定し、顔から疲れが抜けて行き、それが亜実にはたまらなく嬉しいことであった。


だが、この生活を続けるうちに、アダムとしてではなく、亜実としてこの母親に接したい、亜実の母にもなってもらいたい、という気持ちが抑えられなくなった亜実は、旅立ちを決意した。


この世界に来て、いや、高木亜実の生で初めての母。


この人を幸せにしなければと思った亜実の気持ちはもはや疑似ではなく、本気でアダムの母を慕う、子の気持ちへと変化していた。


自由なこの世界で、自由に生きるつもりの亜実だったが、しかし帰るところが出来たと思い、その目的は変化していた。


まずはアダムの意識を復活させるのが、当面の目標だ。

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