弱体化の現実
「ジアナさんっ!」
タツキが飛び出し、不意を突いた蹴りをシャサの腕に当てた。
シャサの拳は跳ね上げられ、ジアナには届かなかった。
続いて、跳躍していたゴウがハンマーを振りかぶり、シャサに向かって振り下ろす。
だが、ゴウの一撃を上回る速度のシャサは、余裕綽々の蹴りを繰り出して、ゴウの顔面を蹴り抜いた。
「地下牢、ウチとケンカする気か?」
エタースの言葉に、どよめきが起こる。
「それはそっち次第ですよ!」
声を荒げるタツキの目には、明らかに力が上の相手を前にした焦燥と敵意が混じった火花が散る。
そしてゴウは、エタースにシャサ、周りの人間の動きを注意深く警戒する。
速度向上魔法を重ねがけし、超人の肉体的なポテンシャルを最大限に発揮して二人がかりでかかっても、シャサの拳を一回跳ね上げるのが精一杯であることを考えると、もう一人敵が潜んでいた場合、総合力で絶対にかなわない。
「大丈夫か!?ユキシマ!」
ジアナを守る様にシャサに立ち塞がるタツキが、視線をシャサから外さずにゴウに声をかける。
無言で鼻血を拭ったゴウがタツキと並び立ち、ハンマーを構える。
シャサは冷たい目でタツキとゴウを睨み、拳を開く。
手には暗器バグ・ナウが握り込まれていた。
バグ・ナウは、握った拳の指と指の間から出た鉄爪による武器だ。
回復魔法のないジアナが首を引っ掻かれでもしたら、頸動脈切断で死ぬ可能性は高かった。
ジアナの全身の毛穴から、汗が吹き出す。
「ムカつくんだよなあ~〝地下牢〟のタツキィ~」
「目障りなガキは今やっておくべきだな」
顔を歪めるシャサと、冷静ながら隙がないエタースが並び立った。
タツキとゴウも、汗の噴出を各々かんじていた。
「勝ち目は…ないね」
「やばいな。逃げるか」
「そうしたいよね。でも、あの子もジアナさんも、見過ごしてはおけない」
「だよな」
以前ならいざ知らず、現在のタツキとゴウでは、シャサ一人相手であっても勝ち目はない。
タツキは剣に手をかけ、さらに目を血走らせた。
ゴウは混沌の二人、周囲の間合いを警戒して、神経を張り詰めさせ続けていた。




