店番のネネクレア
「お師匠様、またそろそろポーションに使う液が少ないのです。採りに行くのです」
ネネクレアはキーネに、ポーションの材料を調達する様に促す。
「何が足りないんだい?」
「ヨモギとバジルの混合液に、バラ液なのです。ちゃんと量を確認しとかないから、こういうことになるのです」
「そうだねえ。見てるつもりだったんだけどねえ。しかし困ったねえ…」
ムーラン商会は、瓶やポーションや薬の製作で商売している。
そしてこの店のポーションで必要なのが、ハーブ液である。
通常、ポーション製作には、精製した水に魔法を込めた聖水を混ぜる。
よって、非常に高価なものになるのだが、ムーラン商会は聖水を使わない。
代わりにハーブ液を使う。
魔法を込めた聖水とは比べ物にならないぐらい、効果は薄い。
だが、駆け出し冒険者には、飛ぶ様に売れる。
人気なのは、ヨモギ、バジル、そしてバラ。
少し珍しいところでは、ビールに使うホップなどもハーブとして使用する。
ヨモギやバジルは、この国には生息していない為に、取り寄せるには値が張るし、バラはポピュラーなハーブで、これまた値が張る。
どちらも精神安定作用があり、戦いにおける恐怖や緊張を和らげる為に必要なもので、ムーラン商会では、ポーション製作に必須のものであるが、野生している素材には極力金を払わない方針だ。
よって、どちらも自分たちで採らねばならなかった。
キーネは腕を組み、渋い表情だ。
「ネイティスやラルドまで採りに行かなきゃならないのは骨だねえ。だけども、そうも言ってられないからねえ。行くしかないねえ」
近場での採集ならば、一日店を休んで二人で行けばいい。
だが、ヨモギやバジル、バラともなると、隣国まで行かねばならない。
つまり、かなりの間、店を休まなければならない。
「店は休めないし、金は使わない。幸い、液の残りはまだある。ならネネ」
「嫌な予感がするのです」




