アリス泣く
「あっのっこっはった●よ~うのっこまちっエェンジェル!やっやっみっだっれてよう、せぇ~い!」
木の枝を手に持った少女の、調子っぱずれの歌声が森にこだまする。
アリスは、復活する池中瑠璃を回収しに来ていた。
「おっ、あれだわ」
アリスの視線の先には、黒い気立ちのぼる虹色の塊ひとつ、池中瑠璃の死体がある。
周りには、瑠璃を守る様に取り囲む動物たちがおり、アリスに敵意を向けて来るが、アリスは意に介さない。
何故ならば、アリスには、瑠璃との間にわだかまりがない。
一度殺されはしたが甦ったし、好きだと告白されたことで、旅の道連れにしてイチャイチャすることしか、もう考えられない。
瑠璃だって、甦ればきっとそのはずだ。
故にアリスは手を合わせ、浮わついた気持ちで動物たちに明るく語りかける。
「ごめんて!池中生き返るから許してほしいわ」
だが、動物たちの目は怒りに満ちている。
アリスが近付くと、動物たちはモーゼの十戒の様に割れ、アリスを避ける様に下がる。
それでいて、瑠璃の周りからは退かず、行く手は阻む。
中には、アリスの手などに噛みついてきた者もいた。
血が滲む手と、噛みついた者を交互に見やったアリスは俯き、瞳を涙で潤ませながら、動物たちに背を向けた。
アリスは、念話で非難してくる動物たちの声に無言を貫き、その場を後にして、瑠璃が用意した、いつかの木の穴の家まで来た。
穴の中に入ると体育座りになり、膝に腕を、その上に額を乗せると、大粒の涙を零した。
「池中が何をやってあぁなったとか、俺と池中の間に何があったかとかちゃんと知らんで、うわべだけで判断しておかしな態度取りやがって。俺があいつらの為に色々してやった恩も忘れてよぉ。池中も、恩知らずのこんな森ももう知らんわ」
雨が降り出した。
そして小雨が、次第に豪雨へと。
雨音が森の音を掻き消す。
アリスは声をあげて泣いた。




