地下牢、再出発
タツキをさらにサポートしてやる為に、ゴウもほしいと願ったが、今のゴウでは徳が少し足りない、と言われてしまった。
タツキの場合は、LVが初期値まで下がるという過酷な状況を〝大きな試練に立ち向かう〟と判定出来た、とも。
「じゃあ、俺の今までの経験値をティナにやるよ。それは徳にならないか?足りないか?足りるなら、俺もスキル振り分け型にしてくれ。頼む」
ゴウは自分が〝周りへの、人間への貢献をせずにはいられない人間〟だということに、気付いていない。
タツキが普段、自然体でボーッとし、そう徳を積まない間も、ゴウは日常的に無意識の善行を積んできたし、ティナに徳が足りないと言われれば素直に受け入れ、さらにタツキの為に力がほしいと願える〝無償の優しさ〟がある。
それは大人であれば偽善とされるかもしれないが、幼い時分を異世界で生き抜き、ねじ曲がらずにきた経緯を見ると、それを偽善と言える人間は少ないだろう。
これを〝徳〟と判定されたゴウは、ティナによってタツキと同じ〝加護〟を与えられた。
『今までの経験値を全部私にくれる〝徳〟を積む〝試練〟をあえて作り出すなんて、ゴウは凄いね。』
「俺なんか大したことないよ、タツキに比べれば」
自然体で飄々と生き抜いてきた親友を、ゴウは尊敬している。
そこには僻みなどないのだが、卑屈な言い方になるのは、前の世界での育ちが関係している。
ゴウは、あまり父親のことは思い出したくなかった。
『そんなことない。私はタツキよりゴウの方が凄いと思うよ』
LVが高いままの方が、タツキを効率よく早く強くしてやれるだろう。
しかし、一緒にまたLVを上げる方を、ゴウは選んだ。
スキルがそのままならば、新たなスキルにポイントを振り分けて、二人でより強くなれると思ったし、もう一回、イチから冒険を始めるのも、タツキと一緒なら悪くないと思ったからだ。
「ありがとうな。まあ今回は、転移したら牢屋の中でした、みたいなこともないんだし、前より強くなれるしな。ティナにも恩返し、するから」
『…期待しとく。じゃあ、やるね!』
「頼む」
かくして、ゴウもLV1に戻った。
タツキが言う。
「ユキシマ、何ブツブツ言ってるの?」
「ははっ、悪ぃ、何でもない」
怪訝そうなタツキに向かって、ゴウは快活に笑った。




