公女フィオラ
少女が目を覚ますと、真っ白な天蓋が目に入った。
純白は天蓋だけではない。
部屋全体が白で統一されていて、家具などには金の装飾、ベッドやカーテンには金の刺繍がなされている。
それは少女の無垢な美貌と相まって、清廉でありながら華がある雰囲気を醸し出していた。
この部屋は、彼女がいることによって一枚絵として完成を見る、と誰もが思う程に美しく少女を彩り、少女はこの部屋に限らず、いつ如何なる時でも常に輝くその美貌を讃えられた。
少女は体を起こし、見慣れた部屋を見回して、窓の方に目を向けた。
そこは大きな掃き出し窓で、バルコニーへと続いている。
外を見ると、静かに雨が降っている。
雨が降る時、彼女が外に出ることはない。
騎士姫と呼ばれる彼女は、天気が晴れであれば、甲冑をつけ、馬に跨がり、騎士団を率いて魔物を討伐する。
だが、雨が降っている時に彼女が出撃すると、騎士団もそれに付き合わされることになる。
それは、彼女には出来ないことであった。
ある程度の我が儘も通すが、一線は守って聞き分けもいい。
それが彼女の生き方だった。
普段ならば内心地団駄を踏む雨ではあったが、今の彼女にとっては、楽しい一時を運んで来てくれる雨だった。
今、城には〝地下牢〟のタツキが戻って来ている。
〝やることがない〟彼女は、ベルティザへの潜入調査の報告会という口実で、彼、タツキに会えることが嬉しく、待ち遠しかった。
「誰か」
彼女が声を発すると、かしづく侍女が三人、すぐさま部屋に入ってきた。
「着替えを」
純白のドレスを召し、彼女の美貌は一層の輝きを増した。
報告会の開始はまだ二時間ある。
もう、待ち遠しくてたまらない。
ン・ディータ・フェーデ・レパード公国第二公女、フィオラ・ン・ディータ・フェーデ・レパード十四歳の春、成人間近のある日の朝であった。




