二兎が追う着物
地下の最深部、大きな広間その奥には石造りの祭壇があり、そこには、ギルバーティが逆さまに浮き、玉虫色の後光が差している。
そしてその前に、ギルバーティが二人いる。
「あれが本体か。ん?奴らは…」
「本体を守る為に配置された分体ですね。昼までの私たちならば、殺されていた強さでしょうね」
「今は勝てる、と?」
イゴールが戦闘態勢を取ろうとする。
だが、ビクトーに制された。
「勝てますよ。しかも、真っ向勝負でね。しかし必要ありません。大丈夫、任せて下さい」
涼しげな顔で、ビクトーは前に出る。
ギルバーティたちが、声を揃えて迎えた。
「「お前ビクトーか?久し振りだぜ」」
「ええ。…いいでしょう?この服」
「「いいぜ…!凄くいいぜ…!」」
「ふふ…よければ、差し上げましょう」
ビクトーの着物が無数の蝙蝠となって一瞬飛び立ち、時間が巻き戻る様にビクトーの体に張り付いて、執事服になった。
「ただし、一着しかありませんが」
ビクトーが、イゴールの着物を脱がせにかかる。
そして、ゆったりした様でいて、その実素早い畳みで形を整え、ギルバーティにうやうやしく渡そうとした。
着物を受け取ろうとしたギルバーティ。
だが、その腕を、もう一人のギルバーティが掴んだ。
「何故お前が受け取ろうとしているんだぜ?」
「お前こそだぜ」
ビクトーが、笑いながら言う。
「強い方のギルバーティ様に、差し上げましょう」
「「それがいいぜ」」
かくして、ギルバーティ二人の戦いが勃発した。




