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帰って来た娘
「ただいまでござる」
もう一人の娘、服部あずみが帰ってきた。
妻と共に、店内に迎え入れる。
「お帰り、あずみちゃん」
帰って来てくれたことに、安堵の声を漏らす妻が、ゴードンは不憫でならない。
服部あずみもいい娘だ。
素直で、優しく、あの娘と一緒だとバカもやるが、あの娘の様な、メチャクチャな破天荒さの持続はない。
あの娘の代わりは、誰にも出来ない。
一瞬の沈黙。
そして扉が開いた。
「ねぇちょっと。表に俺の椅子がないわ。どこにやりやがったこの野郎」
あの娘が帰ってきた。
何食わぬ顔で。
よく見ると、顔に縫い目が走っている。
可愛いエプロンドレスはボロボロだ。
きっと修羅場をくぐり抜けて来たのだろう。
エルザが泣き出す。
そしてゴードンも堪えきれず、嗚咽を漏らす。
「腹が減ったわ。風呂にも入りたいわ。俺の左脇の臭いときたら、まるで肉汁たっぷりジューシー肉団子だわ。…まじひくわー」
相変わらずの口調。
まるで何もなかったかの様な態度。
しかし揺れる赤い双眸。
溢れる涙。
ゴードン夫妻が声を揃えて言ったのは、たった一言だけだった。
お帰り、と。




