薬店、家族の肖像
ゴードン薬店の朝は早い。
以前は妻のエルザが一人で店を切り盛りしていたが、最近はゴードンとエルザの二人でやっている。
ゴードンは、奇抜な格好をやめ、店の仕事も毎日やる様になった。
エルザが寂しげな目で、カウンターの中から、勝手口の方を見るのを目にする度に、やるせなくなる。
だから、自分がカウンターにいて、エルザにはカウンターの外で接客させたかった。
あの娘がいた頃の環境に、妻を置いていたくなかった。
あの娘のことを忘れたいわけでも、忘れさせたいわけでもない。
ただ、見ていられなかった。
ゴードン夫妻には、子供がいない。
それで構わないとゴードンは思っていたが、エルザはやはり、子供をほしがっていた。
その気持ちは、ゴードンとしてもわかるし、子供が出来ればどんなにかよかっただろう。
しかし、現実問題として、子供は出来はしなかった。
しかし、日々の生活によって、これが自分たち夫婦の形になってゆき、うちは子供がいないからね、という言葉がことあるごとにエルザの口から出ることが堪らなかったゴードンは、ある日突然奇抜なダメ親父になった。
周りの人間は、ゴードンがバカになったと笑ったし、エルザに同情した。
するとエルザが言った。
うちは子供がいないけど、あの人が子供みたいなもんさね、と。
だからずっと続けていた。
薬店の仕事もせずに、煮込みを作る不可解な店主を。
そんな中、あの事件があった。
ゴードンの命が断たれ、妻エルザが悲嘆に暮れた時、あの娘が甦らせてくれた。
目が覚めると、妻に抱きしめられた。
そんな自分たちを見て、あの娘は太陽の様な笑顔で、親指を立てた。
あの娘は笑顔ながら、ぼろぼろと大粒の涙を流していた。
魔人だというが、優しい娘だ。
妻エルザと目が合ったゴードンは、俺たちに娘がいれば、きっとこんな娘だったろうよ、と妻に向けて目で語った。
妻の目を見ると、そうだね、と言っている様に思えた。




