地下牢の二人は止まらない
壁を作って目隠しをした瞬間、天井に穴を開けたゴウは、タツキを抱えて跳躍し、上の階へと逃れて、穴を修復した。
この方法で瞬く間に地上近くまで逃げおおせたことに、敵は気付いているだろう。
だが、追って来る気配はない。
二人が地上に出ると、もう真夜中だった。
風は冷たい。
昼との寒暖差、その寒さが、まるで今の自分たちの状況の様だ。
吸血鬼が、自尊心を満たす結果を得られた時に、敗走する敵を追撃することはまずない、という話は聞いてはいたし、経験値を吸い取られたタツキを追う理由もないのだろう。
だが、四年を費やし共に強くなった片翼、タツキを振り出しに戻されたということは、共に努力した日々を壊された様で、ゴウは悔しかったし、怒りに震えた。
「助かった~。ユキシマ、ありがとう」
「ありがとうじゃねーよ!どうするんだよ!LV1からやり直しだぞお前!」
ゴウはつり上がった目をさらにつり上げながら、タツキの肩を掴んで振り回した。
タツキは、眠そうに半目になった目で、笑った。
「やられた時はくそーって思ったんだけど、大丈夫。どうにかなるよ」
「お前なー…」
ゴウは呆れ顔ながらも、少し安心していた。
初期LVに戻るという、取り乱して当然の事態にも動じないタツキに。
この世界に転移して来た時から、この胆力は変わらない。
「とりあえず、レパードに戻ろうよ。あいつらに対抗出来る様に鍛え直さなきゃならないし、魔法職の仲間もほしい」
「…そうだな」
転移して間もなく、パニック状態のゴウと違い、タツキは慌てず騒がず、即座に街に向かって歩き出した。
こいつはきっと今回も立ち止まらない。
だったら、サポートしてやるだけだ。
「あの吸血鬼と悪魔のコンビとは、絶対にまた会うと思う。それまでに、昨日までの俺たちより強くならないといけないと思うし、それに」
タツキの目にギラリとした光が宿る。
「LVは下がったけど、見てよ、スキルも魔法もそのままなんだ。かえって得したんじゃないかなって。俺、絶対にもっと強くなれるよ。悪い奴らは全員、表舞台から消してやろう!」
「そうだな!俺たち」
「「地下牢!」」
「だもんな」
〝地下牢〟の二人は、敗走を敗走とは思わない。
レパード公国への帰還を決めたのは、再修行、そして、子供過ぎたが故に得られなかった仲間の獲得の為だ。
タツキが笑い、ゴウも笑った。
風が止んだ。
雲間から月が顔を出し、二人を照らしていた。




