クマガイの存在の軽さ
ビクトーは思う。
こんなにも黒い魂は、そうそうあるものではない、と。
クマガイの魂は、純粋に黒く、穢れきっている。
これは単なる恨みがましい魂ではない。
人間を逸脱した精神を持つ狂人の持つ黒さだ。
悪気なく低俗で賤しい悪事を働き、身勝手に責任転嫁し、少しでも気に食わなければ逆恨みを繰り返す。
これこそがクマガイの真骨頂だ。
まだ出会って間もないながら、ビクトーはクマガイの性根をおおよそ把握していた。
「パーティーを組んだ女がどっかに行っちゃって!金も食糧も持ってたのはあいつだったんで、俺は無一文!だから食い逃げで食い繋いで!」
何と低俗な男だろう。
ビクトーは、呆れるイゴールと目が合い、少し肩をすくめて苦笑した。
クマガイは、自分の悪事自慢を延々続ける。
幾層も下に降り、クマガイの話にイゴールが苛立ちの態度を隠さなくなった頃、通路の向こうに明かりがついているのが見えた。
そして人影も確認出来た。
黙り込み、歩が鈍るクマガイ。
「下らん話に飽き飽きしていたところだ」
イゴールの、前に出ながらの一言に、クマガイがピクリと反応し、その表情に怒りの色が見えた。
ビクトーも躊躇なく歩を進めて、人影に近づいてゆく。
その際に、尻込みするクマガイを見たビクトーはほくそ笑んだ。
「本当に…素晴らしい」
クマガイの魂がさらに黒く穢れてゆくのを見ての笑みであった。
今回は…苦笑ではなかった。




