クマガイのトラウマ
有栖川たちの見舞い後程なくして、クマガイは盗撮が癖になった。
それはある時、スマートフォンを取り落としたのがきっかけだった。
床に落ちたスマートフォンに、クマガイは閃いた。
それ以降、回診を狙ってはムービー撮影をONにし、スポーツバッグの上にスマートフォンを置く様になった。
角度調整も上手くなり、思う様に撮れる様になった頃、今度は自分の手でスマートフォンを持ち、盗撮する様になった。
盗撮している時の刺激だけが、クマガイに、有栖川の顔を忘れさせた。
事件は退院しての復帰初日に起こった。
有栖川たちを見ると、見舞いの傍若無人ぶりが脳裏に浮かび、クマガイは気分を害した。
そしておとなしい高木を見て、暗い劣情を抱いた。
スマートフォンの撮影機能を起動し、背後から近づいて、スカートの中を撮影し始めて数瞬後、盗撮に気付いた有栖川に殴り飛ばされた。
そして組み伏せられ、顔を殴られ続けた。
周りには散々罵倒された。
そしてまた、入院することになった。
今度は、誰も見舞いに来なかった。
そのせいで、多人数の目に晒されること、人に敵意を向けられることが恐怖になってしまった。
全ては有栖川のせいだとクマガイは思った。
恨みの気持ちは、無限に湧き出してきた。
「クマガイ様の魂は素晴らしい」
ビクトーの言葉で、クマガイは思考を中断し、探索を再開した。
ビクトーの言葉に含まれる黒さを、クマガイは理解出来ていない。
「俺は純粋だから!」
「そうですね。純粋で激しい魂でいらっしゃいます」
一瞬で数人を屠る強者に、自分を認めてもらえた。
その気持ちが、クマガイにとっては嬉しかった。
敵意ある攻撃から守ってくれるのも嬉しかった。
女たちにとって、有栖川がそうである様に、自分の仲間はこのビクトルとイゴルグだ、と、クマガイは思った。




