クマガイのトラウマ
クマガイは、有栖川になりたかった。
有栖川の様に、好き勝手やって好かれたかった。
しかし、上手く行かなかった。
それが腹立たしかった。
だから、有栖川が気に入らなかった。
自分が持っていないものを全て持っている有栖川が気に入らなかった。
「よぉ、おめぇクマガイだっけ?調子どうよ?こっち来たらいいわ」
ある時有栖川は、クマガイにも馴れ馴れしく声をかけて来た。
有栖川が服部の机に座っていて、服部が有栖川の太股に手を置き、その手の上にこめかみをつけてクマガイの方を向いている。
池中は椅子を持ってきて、本を片手に有栖川の傍らに座っている。
高木は、有栖川のすぐ向こうに立っていて、クマガイからは半身隠れて見えていた。
クマガイへの三者三様の拒絶と似て非なる光景がそこにはあり、しかも三人の女は、クマガイを見て硬い表情を浮かべた。
それは、クマガイに怒りの感情を抱かせたがしかし、怒りの矛先は、有栖川に向いた。
クマガイは、有栖川に恥をかかされた、という気持ちとなり、敵意を剥き出しにしたのだった。
クマガイにとって有栖川は、無神経に声をかけてきた、デリカシーのない男。
有栖川が許せず、クマガイは詰め寄って凄んだ。
「調子乗んなてめえ!やるかおらあ!?俺がどういう気持ちかわかるか!?いつもいつも女とイチャイチャしやがって!」
クマガイは、有栖川の胸ぐらを掴み、机から降ろして、顔を殴った。
次の瞬間、クマガイはうつ伏せに倒れていた。
有栖川が、すぐさま右フックで反撃し、顎を打ち抜き、昏倒させたのだった。
「頭おかしいんかこいつ。まじないわー」
クマガイは、有栖川と女たちを許さないと思った。
「一発は一発だわ。ゴミクズが」
歪む視界で有栖川の顔はわからなかったが、クマガイは、見下されているとかんじた。




