クマガイのトラウマ
クマガイは、有栖川が嫌いだ。
自分と正反対の有栖川が。
あいつの周りには、いつも人がいた。
自分には、ないものだ。
あいつは誰にでも馴れ馴れしくて、誰にでも偉そうで、誰にでも粗暴で、そして、弱い者やはみ出し者に優しかった。
服部あずみは、一部からござる女と呼ばれ、からかわれていた。
しかし、彼女がからかわれている際に、有栖川が、服部可愛いわ、と妙に通る声で言い、皆が注目する中、割り込みに行き、楽しそうに話していた。
次第に服部あずみをからかう者はいなくなった。
そして服部あずみの方から、有栖川と一緒にいる様になり、有栖川にだけ優しい目をする様になったのをクマガイは見ていた。
池中瑠璃は、冷たい雰囲気と、成績のよさを鼻にかけた様な尊大な態度で、避けられていた。
しかし、有栖川が読書中の池中にちょっかいをかけて、よく一緒にいる様になった。
次第に、ちょっかいをかける側が逆となり、池中瑠璃が、有栖川の姿ばかりを探す様になったのを、クマガイは見ていた。
高木亜実は、目立たなかった。
雑用を一人黙々とこなしていたが、誰もそれを特に意識しなかった。
しかし、有栖川が雑用をたまに手伝い、高木がはにかむ様になった。
次第に、高木が潤んだ目で有栖川を見る様になり、常に有栖川について回る様になったのを、クマガイは見ていた。
自分も、三人に向かって、有栖川の様に接したくて話しかけてみた。
だが、服部は机に突っ伏して寝たふりをし、池中は眉をひそめて一瞥して無視し、高木は有栖川の後ろに隠れた。
悔しかったし、悲しかったし、寂しかった。




