往来の吸血鬼
マシアスは内心驚いていた。
神殿は魔王に相対する敵勢力だと思っていたし、その尊大な態度には反発心があった。
だから、マシアスたちは、何があっても神殿の世話にはならないだろう。
だが、神殿勢力の神官が、今回の件に絡んできて、吸血鬼であるマシアスたちを頼ってきたのは、ある意味では勝ったかの様な気持ちにすらなる。
「魔族を持て余すぐらい、神殿の力ってのは弱くなってるってことか」
先を歩くミラーへの嫌味な挑発のつもりで放ったマシアスの一言だったが、ミラーは歩調を合わせてマシアスらに並び、その通りです、と小声で肯定し、言葉を続ける。
マシアスはまた驚き、目を丸くした。
「ロウ・リ・ネイティス国内においては、過去最も弱体化していると私は思います。ルレット様、ガイン様共に行方知れず、そしてユウ様は隣国ン・ディータ・フェーデ・レパード公国へと行ってしまわれましたから」
マシアスとフォンテスは顔を見合わせた。
ビクトーいわく、炎の女神官ルレット、聖騎士ガインは共に厄介な存在だが、いちばん面倒なのは超人勇者ユウだ。
魔人アリスを遥かに凌駕する強さを持ち、アリスと同系統の短絡的な思考でもって、魔族を脅かす迷惑な存在。
そんなユウが今、国内にいないとなると、今が本格蜂起のチャンスだ。
「だから、今がチャンスだと思いますよ。ギルバーティを引き取ってくれるということなので、これくらいの情報はお渡しして、私が神官を務めているアーマンダインの神殿とは、つかず離れずの良い関係を築いていただけたらなあと」
そして再び先を歩くミラーは、吸血鬼の考えを理解しているかの様に言った。
「もちろん、アーマンダインにあなたたちの隠れ家も用意させてもらいますよ」
それはプライド高い吸血鬼たちにとって、自尊心を満たされる一言であった。
支援者の立場を得ようとしている。
ミラーの態度はそう思わせるものだった。




