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ビクトーの瞳術
看守が再び近付いて来た。
ビクトーが鉄格子のすぐそばに立ち、涼しげな目で、看守をじっと見る。
その姿に気付いた看守の肩が、一瞬びくりと跳ねた。
ビクトーは尚も看守を見る。
そして、口の端を持ち上げ、嗤った。
「くくく、くっくっくっくっく」
その嗤いに、看守の顔がひきつり、次第に憤慨の表情になる。
「おい、黙れ!」
看守は、カンテラの灯をビクトーに向ける。
それをビクトーは待っていた。
待ち受けるは、血の様に赤い眼。
「お前その目、その目は…」
「ええ。私の目を見て下さい。もっと奥まで。そう、奥まで」
「ああ…。奥ま…で…見て…いる…。俺は…お前の…目を…奥…まで…」
「そうです。奥まで」
ビクトーの口が裂け、白目が闇の色に染まっていった。
看守が、牢の鍵を開ける。
悪魔の瞳術を初めて見たイゴールは、自分やマシアスたち吸血鬼と違うビクトーの異容に、一抹の不安を覚えた。




