天使降臨
そして、アリスにも、その顔を向けた。
「きゃっ、こっち見んなエッチ!誰か俺にローブをー!」
「…魔人アリス、てめえに聞きてえ」
「ローブ!ローブをー!…ん?」
真顔になるヴァリッジ。
空気を読んで、アリスも真顔になる。
「まずはエディのクスリ抜き、感謝してる。だが、てめえに、何のメリットがあるってんだ?」
相手は魔人だ。
何を企んでいるか、わからない。
そして、正直に企みを言うとも思えないが、発言の傾向から、方向性は見えるかもしれない。
さあ、どう出る魔人。
「天使っぽいからだわ」
「…何?」
「天使っぽいからだわ。」
「…何の話をしてやがる、てめえ」
「だから、エディを助けた話だわ」
「…意味がわからねえ」
ヴァリッジは苛立ちを抑えきれず、顔を歪め、アリスを睨んだ。
アリスも険しい顔になる。
「何でわかんねぇんだよ、ゴミが。俺みたいな可愛い子が死にかけてる奴とか助けたら、可愛くて優しいっつっていいカンジだろうが」
「…代償は何だ」
「はぁ?お前俺をナメてんのかコラ。死んだ奴をタダでホイホイ生き返らせるいい奴なんだぞ俺は。クスリ抜くぐらい、いくらでもやってやるわ。まぁ、ゴードン薬店の看板娘がクスリ抜きしたら、店の評判もよくなるとか、何かそんなかんじもあるかもみたいな?…だからまぁ、アリスちゃんまじ天使、人間の味方、薬のことならゴードン薬店っつって言い触らせ」
「魔人が何故、人間の味方をする」
「バカ野郎お前、俺は前世でにん…天使だったんだわ!それも大天使!」
アリスは嘘をついた。
魔人はどうも悪寄りに思われている様なので、そのイメージを払拭しようという、単純な考えで天使を騙った。
前世で人間だったと言うより、天使だったと言う方がスケールがデカいし正義っぽくてヒーローっぽい、大天使なら尚いいという、短絡的な動機だった。
そしてそれは、この場にいる全員が、圧倒的な説得力をかんじるには十分だった。
これまでアリスは、人間の味方をし、街を我が物顔で練り歩き、チマチマ仕事をしては、薬店の前で油を売っていた。
常に、人間を見守っていた。
エディのクスリ抜きにしても、腑に落ちた様な気持ちになった。
誰もが、アリスの言葉を信じた。
そして、吸血鬼アランを殺そうとしないことについても。
「…そういうことか。吸血鬼にすら、慈悲の心というわけか…」
ヴァリッジ、そして外野のタシリモたちが感嘆し、どよめく。
あずみと泥島は呆れ顔だ。
誰かが叫んだ。
「なっ、何という!何という名前の天使だったのだ!?御名を!御名をお聞かせ願いたい!」
「えぇ!?ワッ…」
「ワッ?」
「ワラエル…?」
大天使ワラエル地上に降臨、アリスちゃんまじ天使、との報が、瞬く間に広がった。




