そしてアリスは振られた。
あずみは妖刀繊月を拾い上げた。
そして正眼に構え、全速力で駆けた。
狙うは…アリスの首!
「離れろでええええ…ござるううっ!」
真っ直ぐ振りかぶり、思いきり降り下ろした一撃は難なくエディにかわされた。
しかし、あずみは意に介さず、闇雲に繊月を振り回す。
「危ないわ!服部お前それ、俺の首と胴体に離れろって言ってるやつだろオイ!殺る気まんまんじゃねぇかコラ!ふざけんなよ、いやいやまじで!」
あずみは、アリスから視線を外さない。
顔が痙攣している。
「つい斬ろうとしちゃったでござる!浮気してるアリスが嫌いで!」
「何だとこの野郎!俺だってお前なんか嫌いだわ!服部何だお前この尻軽女が!こっちは死んでゾンビになったり!ヤク中のエディからクスリ抜いてやったり!穴倉とか池中…のことは置いといて!色々あったってのに!お前はしれっと他の男の影なんかと重なりやがって!影が重なるって、ちょっと文学的な下ネタか!ってやかましいわ!」
「何を!?影化にそんな意図はないでござる!師匠とは何もござらんし!それに尻軽はこっちのセリフでござるよ!アリスその娘と一体どこまで行ったでござる!?ちょっとそこまでだわ、ってやかましいでござる!」
「出た出た、オイ!俺が言おうと思ったボケをスラッと先に言うやつ!ちなみにエディとはまだ何もないわ!」
「そっちこそ、相変わらずツッコミがキレてるでござるな!それでこそ我が相方でござる!まだって言い方が引っかかるけど、とりあえず安心したでござる!」
「「よし!」」
アリスとあずみは、同時に親指を立てた。
ふたりの間には、確かな阿吽の呼吸があった。
アリスは身をよじらせてエディの腕から降り立ち、あずみは繊月を地に刺して、アリスに向けて穏やかな笑顔を見せた。
泥島が心のこもらぬ声で言う。
「こいつ池中に好きって言われて、イチャイチャしながら旅するって俺に言いましたよ」
数瞬の沈黙。
アリスは喉を鳴らした。
「…バ、バカお前それを言うな。ルール違反だわ」
あずみは無言で影となり、アリスに巻き付いた。
「…ちょっとほらぁぁぁ!服部ガチギレしてるやつだわぁぁぁ!」
そしてあずみはギザギザの螺旋となって、竜巻状に回転した。
「ぎゃあぁぁぁぁぁ、死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ死ぬぅぅぅ!泥島お前覚えとけよぉぉ!いやいやまじでぇぇぇぇ!」
ズタズタに切り裂かれたアリスが、もんどりうって前のめりに倒れた。
影化を解き、シルキーの姿に戻ったあずみが呟いた。
「死して屍拾うものなし」
アリスが、震える指で、地面に文字を書いた。
『自業自得』
あずみは頷いた。
「別れるでござる」
そしてアリスは振られた。




