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エイミーの魂

真っ暗な夜だった。山の中腹にある洞穴から流れ出る川の流れに乗って、続々と不死人(アンデッド)が進軍していた。先頭を行くのは、アンデッドと化したエイミーだった。別の出口から地上に出たデシネは、遠巻きにこのおぞましい進軍を眺める。悪趣味な女だ、とデシネは思った。


洞穴の奥で行われたのは、エイミーをアンデッドと化す為の秘術だった。夫の魂をエイミーの魂と繋ぎ合わせた上で、エイミーを殺した。そして、アンデッド化させた夫の(スケルトン)をエイミーの背中にずぶずぶと挿入しながら、アンデッドとしてエイミーを目覚めさせた。下半身が全て埋まり、エイミーの背中からスケルトンの上半身が生えている形だ。上半身も全て埋めれば秘術は終了する。早く魂を喰らいたい。極上の怨嗟を放つエイミーの魂を期待して、デシネは生唾を飲み込んだ。


スケルトンはエイミーにおぶさる様に腕を回している。目を開けたエイミーが言った。素晴らしい、と。


デシネは耳を疑った。エイミーの言葉は、想定外のものだった。

エイミーが言う。

「私の願いは、夫を蘇生して再び共に生を、というものではありません。だってそれじゃあ、また死ぬ時が来るでしょう?そんなの嫌なんです。私の願いは、生ではなく死。つまりアンデッド化ですわ。」

エイミーとスケルトンは完全に融合せず、今の形で定着した。デシネは苦々しく思った。こんな奴は初めてだ。蘇生だと偽り、アンデッド化させることでエイミーの恨みと怒りを買い、魂を黒く澱ませ濁らせて喰らうつもりだった。だが、願いが成就したエイミーの魂は、黒くはあるが、透き通ってしまっている。

これでは、エイミーは自我を失わない。デシネ自身がこの秘術に使った力を回収するには、相応の魂を喰らわねばならないはずだ。こんな透き通った魂では、何の足しにもならない。そう思った時だった。

「後は、ユウも取り込めば…!ああ、ユウというのは私たちの娘ですわ。」

エイミーは、娘までもアンデッド化させたがっていた。見ると、エイミーの魂が濁り始めている。さらに、(スケルトン)がエイミーに何か囁く度に、エイミーの魂が、どろどろと黒くなっていく。

「ヤ…メロ…!ユウ…ハ…俺ノヨウニ…殺サセ…ナイ…!俺ノ…ヨウ…ニハ…!」

「あなたに何が出来るというの?」

「ユウ…逃ゲロ…!誰カ…誰カ…ユウヲ…助…ケテ…!」

「逃がさないし、誰も助けてくれないわ。あなたと同じ様に、ユウも死ぬのよ。そして私たちは、家族仲良く永遠に暮らすの。」

「オ前ナンカ…家族ジャナイ…!オ前ナン…カ…!ユウ…!誰カ…誰カ…!」

(スケルトン)は涙を流している。凄まじい怨嗟、悲しみだ。

「うるさいわね。」

冷たく言い放つエイミー。デシネの当初の予定とは違うが、どうやら、今、魂を喰らっても、力は回収出来そうだ。それどころか、進化も期待出来るだろう。それほどまでに、エイミーの魂が急激に黒くなっている。この濁り澱みは、エイミーのものなのか、夫の怨嗟によるものなのか。

「あなたの心が私に流れ込んで来るわ。もっと苦しめたい、あなたをもっと!…ユウ、待っててね。」

エイミーのさらなる言葉に、(スケルトン)が泣き叫んだ。エイミーの魂の黒さがさらに濃くなったのを、デシネは見た。エイミーの魂の欠片を少し喰ってみると、えもいわれぬ程の力が湧いてきた。この魂ならば釣りが来る、とデシネは思った。回復した力のほとんどを注ぎ込んで、すぐさまアンデッドの大軍を作り出した。この町全てを巻き込める、呑み込める算段が整った、とデシネは思った。今夜中に邪神になってみせる、とも。デシネにも悲願があった。

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