牢屋の男
男はビクトーと目が合うと、顔に怒りの色を浮かべ、立ち上がり、詰め寄って来た。
「何見てんだ!?っすぞ!?ああっ!?」
その発言に、ビクトーは軽く幻滅する。
それなりの年齢の、それなりの身なりの男がこの態度だ。
「変な格好しやがって!?ああっ!?」
しかし、人間にしては夜目がきく。
この暗闇で、鮮明に視線の交錯がわかるというのは、かなりの手練れなのではないか。
興味は、湧く。
ビクトーは鑑定で閲覧する。
男のLVは、1。
種族は、人間。
そして名前は。
「俺は強えぞお!?あ!?ここに入ったのもよお、いちおくまんにん殺して捕まったんだからよお!?やんのか!?あ!?俺は強えぞお!?」
誰でも嘘だとわかるハッタリを豪語しながら、男はビクトーの胸ぐらを掴んだ。
その瞬間、イゴールに腕を掴まれ、その万力の様な握力によって痛みを与えられ、情けない声をあげた。
「ひえあ!?いででだだだだ、すいませんでしたすいませんでした殺さないで下さい殺さないで」
イゴールも眼球鏡を外している。
そして、汚いものを見る様な目で、男を見た。
胸ぐらから手を離されたビクトーが、微笑混じりに手を掲げ、イゴールを制した。
「…ステータスに表示されているお名前、これは異界のものですね。あなたは転生者ですか?」
「ほんとは、ち●こもないのに女を襲おうとして、婦女暴行未遂で突き出されただけなんですう…え?」
「私はビクトル、こちらはイゴルグ。あなたのお力になれるかもしれません」
「どうした、ビクトー…?」
「ビクトルですよ、イゴルグ。この方は、とんでもない拾いものかもしれません。…一緒にここを脱出しませんか?お名前、お聞きしても?」
「…クマガイです、すいません」




