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昼下がりの吸血鬼たち

馬車が出発する。

馬車を駆るのは、シャノンが使役する下男だ。

首には、噛み痕の穴よっつ。

虚ろな目は、どこを見るわけでもないが、かといって、視界に映るものを認識していないわけではない。


シャノンの支配によって吸血鬼の端くれとなった男の身体能力は、既に常人のそれではなく、目も常人ならざる力を持つに至っていて、視界の明瞭さはシャノンの下男の中でも指折りのものだ。


夜であろうとも、昼間の様に見渡せる目は、前方を何気なく見ている。

シャノンは目を閉じ、男の目と同調した。

すると、シャノンの脳裏に、前方の景色が浮かんでくる。


「特に異常はないわね」


その声に反応はない。

マシアスは窓の外を見ているし、フォンテスは目を閉じている。

シャノンは、純粋な吸血鬼(ヴァンパイア)ではない。

だが、高貴な家の出であり、覚醒によって、吸血鬼としての血は純血種と変わらぬ程の濃いものとなっていた。

故に幹部に迎えられているし、この様な、自分の配下との視界の共有などの能力を使えるのだが、これには欠点があって、とても目が疲れてしまう。

下等な吸血鬼の視界は、位が上の吸血鬼からすれば、いわばピントの合わない眼鏡をつけた様なもので、質が低下してしまうのだ。

視界の共有をカットし、疲れからシャノンは、長めの溜息をついた。


「…アランの奴、来なかったわね」


向かいに座るマシアスと、一瞬目が合った。

すぐにマシアスは、窓の外の景色に目を移す。

硝子の向こうには、森。

代わり映えのしない景色が、ただただ流れてゆく。

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