デシネとエイミー
エイミーが神殿を出ると、男が待っていた。デシネだ。術を施す為に、夫の遺骨を受け取りに来たのだろう、精霊術士の姿で来ている。
「司祭様、お願いします。」
エイミーは狂喜の表情を隠そうともしない。夫が蘇生すると信じている顔で、デシネに遺骨を渡す。その軽率な言葉にデシネは内心焦る。
「声が大きいですよ。」
落ち着いた声で注意するが、気が気ではない。神殿の衛兵に聞かれれば、ただでは済まないからだ。
「司祭」という呼び方をする宗教は、この国にはザハーク教団しか存在しないのだから、二重宗教で地下活動を行うテロリスト教団の関係者だとバレてしまうだろう。アンデッドに強いエクソシストやテンプラーが大挙して詰めている神殿の前でバレてしまえば、倒されてしまう可能性は高いだろう。なのにこの女、エイミーは迂闊にも「司祭」と言ったのだ。信者になって日が浅い者特有の軽薄さに腹が立つ。しかし、今回の儀式は次の新月の夜、贄はこの女でないとならない、とデシネは思っている。
デシネがエイミーから感じるのは、凄まじい悔恨の念。彼女の魂は、とてつもなく黒く穢れていた。あれほどの澱んだ黒い魂を持つ人間をデシネは見たことがない。あれを喰えば、かなりの力を手に入れられるだろうし、彼女を騙して恨みを生めば、あれがさらに黒く穢れるのだ。そうなると、一体どれだけの力を手に入れられるのか、想像もつかない。
デシネは遺骨を持って、神殿前を後にした。一度振り返り、エイミーを見ると、彼女は尚一層の笑顔となり、デシネに向かって恭しく頭を下げた。デシネは、不穏さの塊の様な彼女の雰囲気に思う。エイミーは、夫を殺した張本人なのだろう、と。




