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ただのロイド
受付嬢に促され、執務室に入って来たのは、青年が一人。
金髪のクールカットに青眼。
口元は、紋様の入った青黒い布で隠されている。
全身は黒装束に包まれており、鎧はなく、左肩の肩当てと一体型の、つやのない、黒と鈍色がまだらの汚い胸当てをしていて、そこには、わかりづらいが、ロウ・リ・ネイティス王家の紋章が刻まれている。
手甲は何やら仕込まれているのか、角ばった形状で大きい。
腰には、小太刀。
足はゲートルに足袋。
「お待ちしておりました、ロイド様」
「タシリモよ、様はいらぬ。ただのロイドでよい」
「そうは行かぬのです。あなた様は、高貴なお方なのですから」
「王家の人間であったのは、成人まで。継承権を剥奪されて五年経つ俺を、いつまでもロイド・シ・ア・ロウ・リ・ネイティスと思うな。俺はロイド。ただのロイドだ。よいなタシリモ」
青年は腕を組み、扉の横にもたれかかる。
「その様なところではなく!こちらにお掛け下さい!」
タシリモは、執務机の前に備えられたソファへロイドを促す。
「無用。俺を誰だと思っているのだ」
「後生です、王子」
「仕様のない奴」
ただのロイドだ、などと言えるわけがない。
タシリモには、言えるわけがなかった。




