受けねえ奴は、男じゃねえ
だが本当は、息も切れ切れだ。
超速で動くと、それだけ消耗する。
だが、その甲斐あって、イゴールが膝をついた。
マシアス、イゴール、シャノン、アラン。
四人の殺気が爆発的に放出される。
ヴァリッジは心の中で苦笑する。
吸血鬼は、高貴な出自の者が多く、プライドが高いという。
だからヴァリッジは、そのプライドを刺激するつもりでいる。
「俺としては、弱くてしゃあねえナイフ小僧と、タイマン張ってずっと遊んでいてえよ、なあ?てめえも俺にイジメられるのが好きだろ?」
「全員でやるわよ。確実に殺す」
シャノンは吸血鬼らしからぬ、勝利至上主義を主張する。
ヴァリッジは内心では眉をひそめながら、片目を半眼にし、口の端を上げた。
「それがいいぜ。タイマンじゃ、俺には勝てねえもんなあ。てめえら吸血鬼は、人間一人に群れで襲いかかる、情けねえ下等生物だ。中でも小僧、てめえは弱虫のオカマ野郎だ。俺がこいつらを切り裂いて大声で笑ってんのを、そこで見てろマヌケの腰ヌケ」
クックック、とわざとらしく笑うヴァリッジ。
マシアスが怒りの表情で叫ぶ。
「俺に行かせろ!手を出すなお前ら!」
「おお?こりゃ小僧なんかじゃねえかもなあ」
異を唱える者はいない。
時間稼ぎは出来そうだ。
ヴァリッジは、露店に出てる椅子に腰掛けた。
「なら、今日のところは、昼めし食って帰れ、マシアス。二、三日空けてから、再開と行こうや。…マジでやるなら、魔法剣を用意してえ。てめえだって、血を蓄えて、最強のてめえで来い」
「ああ。望むところだ、双剣のヴァリッジ」
散々小僧呼ばわりした後に、名前呼びへの昇格。
そして、真剣勝負の宣言。
「これで受けねえ奴は、男じゃねえよ、なあ?」
ヴァリッジは立ち上がり、シャノンを一瞥して、背を向けて歩き出す。
「じゃあな、吸血鬼マシアス」
マシアスの燃える様な目は、遠くなるヴァリッジの背中をいつまでも睨み続けていた。




