ヴァリッジ vs 魔軍
喉から血を吹き出し、頬と腹を刺されたマシアスが、顔面血塗れで痙攣している。
背筋をぴんと伸ばし、足を肩幅に開いていたヴァリッジは、背を丸めて猫背になった。
「ケンカだあっ!」
「あの目と牙!吸血鬼だ!」
「助けて!神さま助けて!」
買い物客で賑わっていた往来から、瞬く間に人がいなくなってゆく。
「イゴール、アラン、わかってるわね」
「…ああ」
「…」
イゴールとアランが、同時に戦闘態勢を取る。
ヴァリッジの前には、超大型の戦斧を扱う戦士。
後ろには、刀を持つ侍。
そして。
「飛空魔法。水槍魔法」
空から魔法で狙い撃つ、魔法職の女。
ヴァリッジはかわす。
一発当たれば、ヴァリッジは一気に崩れるだろう。
「ちっ、性格悪いな、女。」
「魔法を使えないチンピラ一人を相手にするなら、これがセオリーよ。雷電魔法」
「男と向き合わない女は、嫁の貰い手がなくなるぜ?なあ」
かわし続けるヴァリッジの足下は、水魔法で濡れている。
当然、雷電魔法が水を伝い、それを踏んだヴァリッジを一瞬硬直させる。
その一瞬を見逃さなかったアランが、後方から斬りかかり、斬撃がヴァリッジの背中に入る。
「余計なお世話よ」
「ちっ、全くだ。なあ?」
硬直してなお、咄嗟に避けた為、傷は浅い。
だが、高レベルの吸血鬼三匹相手にこれはきつい。
先刻倒したマシアスも、じき復活して来るだろう。
そうなった時に、果たしてこの傷程度で済むだろうか?
いや、済まない。
持ちこたえられそうにない。
ヴァリッジは、自嘲気味の含み笑いをする。
「ミスったから仕方ねえ、気合い入れてマジにやるか?」
そしてダガーを抜いた。




