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泥の怒り

先程までは、池中とは距離を取りたいと思っていた。

それは、愛憎混じりの殺害だと思ったからだ。

アリスは、服部あずみと付き合っていて、池中は本命ではないはず。

だから何だか面倒そうで、直接関わりたくはないと思ったのだ。

だが、間接的に意思表示だけはしようか、どうしようか、とは思った。

無関係の自分が魔王となってアリスを甦らせ、池中に対する無言の抗議をしてやりたい気持ちがあるにはあったのだった。

怖気のする、あの死の感覚を知っている池中が、想い人を本気で殺したのならば、もう仲間ではいられないと思った。

だが、アリスは自力で甦り、ノリで殺害されたと言った。

疑念は解消されたし、殺された本人の中で消化出来ているなら、自分の生き死にと変わらない。

ならば、そう問題にすることもない、と泥島には思えたのだった。

が。


「痛ってええ!蹴らないで蹴らないで!やめて!死ぬから!俺すぐ死ぬからやめて!蹴らないで!」

「バッカお前、ゾンビ化してレブナントになって強くなってるから、お前そんなすぐ死なんわ。ほいエディ、パース!」


アリスは、泥島をボールに見立てて軽く蹴りあげ、ヘディングでエディの足元に送る。


「ヘイ、アリスあがれ!」


速度を上げ、森の中を素早く駆けるアリス。

エディが泥島を蹴る。

泥島は空高く蹴り上げられた。


「ほんとだ痛いけどHP全く減ってない!…って、高いの怖えええ!アホと元ジャンキーのコンビ死ねばいいのに!」


泥島が落ちる地点は、開けた場所で柵の手前で、柵の向こうは、ゲブの村だ。

アリスが走り込んで来た。

泥島はもう一発蹴られる覚悟を決め、真顔になる。


「ボールを相手のゴールにシュウゥゥゥゥゥト!!!」


アリスが叫びながら、泥島を村の中に蹴り飛ばす。


「超!エキサイティング!ってバカアアア!」


泥島もつい叫ぶ。

粉砕されることなく、村の中へ飛んで行った泥島は、そのまま村の中央を過ぎ、虹色の物体に思いきりぶち当たる。


「痛っ、何なの!?」

「あ、よお」

「泥島!?あんた、何て時に来るのよ…」


沈痛そうな声を出す池中瑠璃の傍らには、ひしゃげた穴倉の死体。

泥島の脳裏に、アリスを殺した池中が浮かぶ。


「お前、何やってるんだ!?池中あああああ!」

「言い訳はしないわ。今とどめを刺したところよ。仕方なかった。」


どちらが正しいかなどはわからない。

穴倉は心まで化け物になったと、袂を分かった時に思った。

許せなかった。

でも、理屈じゃない。

泥島にとって穴倉は、一番の友だちだった。


「…何だよ、仕方なかったって。」

「仕方なかったは仕方なかったよ。それにあんたも殺すわ」

「ルリ、敵カ!?」

「…そうね、敵よ。私が魔王になる為に殺さなきゃならない一人。」

「トサカに来たぜてめえ!池中あああああ!」


泥島から黒い気が一斉に放出された。

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