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エディの世界
川原で大の字になって、虚ろな目で空を見ている人間がひとり。
エディだ。
空は晴れやかで、川のせせらぎは緩やかだが、薬物によって異常な状態にあるエディは、何も見えず、何も聞こえていない。
薬物の刺激が壮快を生み、喜悦が体全体に広がると、まどろみと酩酊が顔や脳にせり上がってきて、目から脳を厚い膜で覆われた様な、そしてうねる様な濃密な何かが全身を包む感覚に飲み込まれ、エディはより外界と隔絶されてゆく。
すると喜悦に、暗鬱とした感情が混じり出し、次第にないまぜになって、不安定な精神状態が作られる。
頭の中と胸のうち全てが、そのないまぜで不安定な感情で満たされると、不安定であるのに、自分が磐石な全能の存在になったかの様に錯覚する。
エディは幻覚の中で、夜空の星々が異様に煌めいているのを見る。
稲妻の様な光が星から放たれ、ゆっくりと空全体に伸びて、無数の亀裂になって空を軋ませる。
そしてエディには、川のせせらぎが轟音に聞こえ出し、轟音は神意を暗号化したものに思えた。
神からの命令が、エディの脳に染み渡っていく、という妄想が、エディを支配する。
「ごごごごごごごご空が鳴っているるるるる」
体が小刻みに痙攣し、よだれが頬を伝って、首まで流れてゆく。
エディの意識は、ここで途切れた。




