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ゴードン薬店奥の診療所
ブレブロの大通りに面した宿から、薬屋の横の細路地を少し入ったところに、ジャン・ジャック名義で、簡易診療所を構えた。
薬屋としても、診療所と組んで商売が出来るというのは、荒稼ぎのチャンスのはずだ。
だが、薬屋の主人は、稼ぎが安定していることに満足しているのか何なのか、無気力とすら言える様な雰囲気で、商売気に乏しい好条件で、協力を約束してくれた。
薬屋に魔人の少女がいると聞いてはいたが、薬屋の二軒裏が診療所で、薬屋との間にある珍妙な家が、あの魔人の少女の住居だと知った時、ヴァリッジは歓喜で歯噛みした。
しかし、魔人の少女は姿を消してしまっていたし、影の魔物は、少し前までは、魔人の少女アリスと共に、このブレブロの英雄として爆発的な人気だったが、今は病気療養中ということになっていて、誰とも会わない、と噂されていた。
実際には、薬店の店主の女房が出入りしていて、誰とも会わない、ということはないのだが、それほどまでに、ひっそりと暮らす様になっていた。
ヴァリッジとしては、影の魔物ことハットリアズミに親近感を抱き始めていた。
何故ならば、アリスが行方不明である様に、ジャン・ジャックが行方不明で、どちらも何となく、彼らの死を連想させたからだ。




