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バンハールのユウ
バンハールは大都市と言うだけあって、とても栄えていた。堅固な城壁に囲まれているこの都市は、城壁内だけでも千年栄えると言われる程の自給率を持ち、その上で交易都市として潤う。その地力は、他の都市の比ではない。
そこの外れ、農業地帯の中心に、地方領主であるジダール家の屋敷はあった。
出迎えてくれたのは、下級貴族でもあるエイミーの両親に、使用人が三人。馬車から出て来たガインにも動じず、すんなりと受け入れてくれた。聞くところによると、領民には昔からゴブリンなども一定数いるらしかった。バンハールは人種、異形種のるつぼで、異種間交流は特別なことではないらしい。街道で出会った者たちは、バンハールの者ではないのだろう。この人たちとは反応が違いすぎた。
ユウはガインの体に登ろうと、足にしがみついている。ガインはユウの両脇に両手を差し入れてひょいと抱え上げ、彼女を右肩に乗せた。ガインの頭にユウの手がぺたりと触れる。エイミーも、エイミーの両親も、使用人たちも、誰もこの光景を気にも留めない。ガインの頭に手を付けたまま顔を覗き込んできたユウの、無垢な顔を横目で見ると目が合った。するとユウはガインの頭に抱き付く様にしなだれかかってきた。道中で街道を行く人々によってガインの胸に刺さっていた棘が、何だか少し溶けた。




