美味しいね
ガインは、馬車に乗っていた。一緒に乗っているのは貴族の母娘。母の名はエイミー・ジダール、娘はユウ。ガインが助けた貴族の母娘だ。エイミーは20代後半くらい、ユウは5歳だと自分で言っていた。二人とも栗色の髪で、特にセットも何もしていないミディアムストレートだ。ガインは自分たちの危機と御者の命を救ってくれた恩人だから、是非、屋敷で歓待させてくれ、と申し出てきた。そんな迷惑はかけられない、とガインは断ったが、エイミーに是非にと食い下がられ、ユウにも屋敷で一緒にごはんが食べたいとぐずられ、どうしようもなく同乗しているという訳だ。
エイミーの話では、夫が他界し、母娘はこれから実家で暮らす為に故郷バンハールに戻るという。夫の遺骨は先にバンハールの神殿に送ったらしいが、葬儀は神殿ではなく、精霊術士の仕切りで別の場所でやるらしい。バンハールは大都市だ。神殿だけではなく、様々な宗派が存在していて、風習も様々の様だ。
先程からユウが隣で糧食を食べている。ガインが生産魔法で作成した糧食だ。この娘は小さい割によく食べる。
「はい半分こ!」
ユウは、ガインが渡した縦長の糧食を割って、半分ガインに返してくる。
「おいしいね!」
そして頬張り、屈託のない笑顔でガインに同意を求めてくる。
「あ、ああ。美味しいね」
本当はそう美味いとは言い難い。だが、ユウは、おやつおやつと囃し立て、ガインに糧食をせがむ。エイミーが申し訳なさそうに頭を下げる度に、ガインは笑顔で首を振り、問題ないですよ、という意を伝えた。




