狙撃
透明の化け物こと穴倉は、空の上から、ゲブの村の外周を眺めていた。
そして、簡素ながら土壁で囲われたゲブの村には、入口が一ヶ所しかないということを確認する。
内周に設置されている各監視塔には、アーチャーが多数詰めているのがわかるが、攻撃はして来ない。
村を見てみると、至るところで、ゴブリンどもが家屋を壊している。
「全方位から攻撃する気でいるな。遮蔽物をなくすつもりか」
実は穴倉は、その体の構造上、首が思う様に回らず、後方を向くことが出来ない。
広範囲に渡り、完全に死角なのだ。
触手を超高速で自由自在に動かせるので、乱れ斬りで後方をカバーすることも、触手を地面に突き刺して、自分の体を振り回す様にして方向転換することも可能だが、それよりは、ゆっくりと侵攻して、常に敵を前方に集めようとしてしまう。
穴倉が食ってきたゴブリンには、こんな知能はなかった。
だが、この村のゴブリンの動きには、穴倉がわずらわしく思う戦術が、戦略がある。
楽に食える敵だとは思えなかった。
「焼くしかないか」
穴倉は、他者の生き血を吸い、肉を喰らうことで、生物として強くなる特異性を持っていて、それは本能でもある。
故に、一匹たりともエサを無駄にしたくない、という思いもあって、熱線砲を使用するのは、極力避けて来た。
それを使おうというのだ。
糧とするのを諦め、皆殺しにしようというのだ。
穴倉は、角に意識を集中し、光を集める。
そして熱線砲を撃とうと、真っ直ぐ高度を下げ始めた瞬間。
「長距離狙撃矢‼」
ミサの放った矢が肩口に刺さった。
「油断した」
撃ち落とされた穴倉は、落下した。




