ゲブ族
小脇に抱えた子供たちを放し、ラーラは鐘塔に駆け上がって鐘を鳴らす。
「敵襲ダ!敵襲ダ!」
けたたましい鐘の音を聞いて、一斉に村のゴブリンたちが家の外に飛び出す。
すぐに臨戦態勢は整う。
「みんな気を付けろ!奴は、ゴグの村を滅ぼした!」
かつて敵対した部族ではあっても、同じゴブリンだ。
義侠心に駆られた者たちが、怒号を飛ばす。
「仇ヲ!」
「そうだ仇ヲ!」
「平和の為ニ!死者の安寧の為ニ!仇ヲ!」
ゴブリンらしからぬ義侠の感性は、明らかにガインの影響だ。
ミサは勇壮な戦士たちの怒号によって、逃げ出したい思いを振り切る。
勇気が湧いて来る。
子供たちを、村を守るのだ。
滾るミサの傍らにラーラが来た。
「やる気じゃナイカ」
「ああ。ラーラ、逃げても奴は追って来る。ならば、生きるか死ぬか、戦うしかあるまい!」
ミサの言葉に、ラーラが硬質の笑みを浮かべる。
と、近くにいるゴブリンソルジャーが、ラーラに訊く。
「ラーラ、メ殿はどうすル?」
ラーラは、歴戦の勇士だ。
その武勇はガインには及ばないが、皆の心の拠り所になれる器の、強者の一人だ。
「解放してクレ。一緒に戦っていたダコウ」
「わかっタ」
ガインがいない今、ラーラの指示を仰ぐ者は多い。
素直に従うのは、ラーラの武勇を信じている為か、知能の低さ故か、はたまたその両方か。
ゴブリンソルジャーは、メのもとへ走った。




