ゲブ族
しかし、ガインが村をよく空ける気持ちもわからなくはなかった。
皆からの信頼が厚いのも事実だが、ゲブ族は誰しもガインに負い目を感じている。
ガインの母を見殺しにしたからだ。
ガインの母は、病に伏せって死んだ。
ガインが行方知れずとなってから、孤独な母は、誰にも力を貸してもらえず、誰にも看取られることなく死んだ。
ガインが聖騎士となって凱旋した時、誰もが行方知れずになっていた少年の成長と武勇に沸いた。
だがそれは同時に、英雄に成長した少年の母を殺したのは自分たちだ、という暗い後悔を自覚させられることにもなった。
ガインは母の死を悼んだが、村のゴブリンたちを恨む様なそぶりは見せなかった。
それどころか、飢えも病気も何とかしてくれた。
その武勇や知恵を分け与えてくれもし、ゲブ族の村は発展した。
だからこそ族長に推挙された。
単なるゴブリンの器ではないのだから当然だ、ともされ、族長でありながら自由な行動を黙認された。
ガインの母を見殺しにした負い目は、村の誰もが感じていて、ガインはそれ故に、孤高で孤独なゴブリンとなった。
「見えタゾ!村ダ!」
ラーラの声で、ミサは我に帰る。
ここまで来れば、ひとまずは安心だ。
あの化け物には、追って来れる足などない。
…はずだった。
「…何だ、この音は?」
上空から、風を切る音が、とてつもなく短い間隔で聞こえる。
一行が空を見上げると、そこにはあの透明の化け物がいた。
触手を超高速で振り回し、ヘリの要領で飛ぶ化け物は、ミサたちの真上にいる。
「子供見つけた」
化け物の声がいやに耳に響く。
ミサたちは走った。




