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クマガイに未来はあるか
だが、見渡す限り平原には何もいない。
クマガイは歩を進めるしかない。
当然、汗をかく。
その瞬間、クマガイはある些細な、しかし重大なことに気付いた。
被り物は取れず、手には着ぐるみがぴったり吸い付いていて、着ぐるみの中で手を使うことが出来ない。
自分の顔を触ることが出来ないのだ。
なのに、なのにだ。
顔が痒い─────!
一度そう考え出すと、顔の色んな場所が痒く思えてくる。
そして痒みは、全身に広がってゆく。
顔、首、肩、胸、腕、背中、局部、足と、色んなところがだ。
身体中を掻きむしるクマガイ。
だが、顔と首、そして背中に手が届かない。
癇癪を爆発させ、地団駄を踏むクマガイ。
と、遥か彼方に枯れ木を見つけた。
「あれだ!」
猛ダッシュで向かい、枝を折るクマガイ。
そして幹に背中をこすりつけながら、着ぐるみの口部分に枝を挿入し、顔と首を掻く。
痒みは解消された。
クマガイはひとまず危機を脱したが、約一時間後、別の悲劇に見舞われることとなる。
それは、便意である─────!
…夜の帳が下りる頃、えづきながら、へっぴり腰でひょこひょこと歩くクマの着ぐるみがあった。
内側にこもる臭いは強烈だ。
そう、クマガイは、自分との戦いに敗れたのだ。
クマガイが臀部の開閉ジッパーに気付くのは、それから三日後のことであった。




