下等なバケモンが
里の中は木々もあり、川も流れるのどかな風景で、民家が密集しており、生活の音が、香りが風に乗って届く。
しかしあずみは今、そんな人々からやや心が離れかけていて、子ども達の声だとか、飯炊きの匂いだとかに温かさをかんじられず、むしろ寒ささえ覚え始めていた。
それというのは、住民たちが皆すべからく忍の技量と経験を持っていて、しかし人畜無害な人々として暮らしていることに起因している。
あずみの知る隣人たちは、大抵犯罪に手を染めたことがあるのだろう。
(拙者が問い質しても、忍は諜報活動が主だと言うに決まってるでござるが)
あずみが世話になったカワベにしても、忍について詳しいことは教えてはくれなかった。
そこにあずみは疎外感をかんじているし、やましいことがあるのだろうことは容易に想像出来た。
そして、いざ中身を知ってしまうと、落胆と軽蔑の気持ちで冷めた気持ちになった。
「人身売買など、本当にしていいと思ってるんでござるか?」
「あ?」
シャサは、よく理解出来ない、といった顔であずみを見る。
そして、目の前に立つ者への敵意のみのストレートな言葉を返す。
「お前みてえな下等なバケモンが、人間サマに何言ってやがんだよ」
それは喧嘩早いシャサが、あずみ向けに言った挑発の一言だったが、忍の里に疑念を抱くあずみには、里の人間の総意の様に聞こえた。




