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襲来の前兆
「さっ、ワンちゃん飼い主さんちに帰したでござるし、ちょっと休憩してから、ギルドのお掃除に行くでござる。」
服部あずみが、背伸びをしながら大通りを歩いていた。
いい天気で、日差しがあたたかい。
こんな日は日向ぼっこでもして過ごしたい、という気持ちがあるにはあるのだが、そうもいかないのが今の現状だ。
あずみは、本音では、冒険者ランクなんぞどうでもいい、と思っている。
だが、アリスもガインもしっかり仕事をする気でいるし、自分もちょっと頑張って、女子力アピール、ひいては花嫁修行に繋げよう、という思いから、やる気がないわけではない。
かといって、やる気というものは、ない時はないものなのだ、とも思う。
お陰で、退屈しのぎに何か起きてほしい、と願ってしまうし、何かが起きる前兆には敏感になりもするのだ。
だからこそあずみは、後ろから漂ってくる殺気に感謝し、ほくそ笑んでもいた。
フォンテスたちを撃退して、あずみたちの名が売れてからというもの、ちやほやされることはあっても、敵意、殺意を向けられることなど、これまであずみはなかった。
だが、ついにその時が来た。
胸を躍らせ、あずみは、細路地に入った。




