本質は
泥島が振るった拳には怒気がこもっている。
その力は並みの魔物のそれではなく、レイン以外がこの打ち下ろしの右拳を受けたならば、ひとたまりもなかった。
人間ならば、即死する者がほとんどだろう。
だがレインは、痛みと共に多少のダメージを食らいはしても、それで即死ということにはならない。
戦闘不能ということにもならない。
しかもレインは潰れもせず、殴り飛ばされることもなかった。
そのまま改めて大地を踏みしめ、食らった腕で泥島の拳を押し返す。
泥島も強いが、レインも強い。
その力はもはや人間種のそれではない。
いや、この世界にいる魔物の中でも、この一撃を食らって押し返すことが出来る者は少ないだろう。
レインは腕の痛みをかんじながら、しかし涼しげな顔でいる。
「残念なのはあなたですよ」
拳を食らった瞬間のレインは、流石に顔の表情も歪んだものだが、すぐに余裕があるかの様な涼しげな表情になったのだ。
それどころか、笑みすら浮かべ始めていて、大袈裟に身振り手振りで話し始める。
「俺の実力を甘く見積もってくれるのはありがたいですが」
育ちのよさが、言葉遣いの随所で見られるレインだが、本質は少し斜に構えたところがある。
民衆のウケはいいが、戦う相手には不評な態度。
「残念ですよ」
レインはその慇懃無礼さを泥島にぶつけた。




