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ふたりの不協和音

ガインは、うつ伏せに倒れたまま、ピクリとも動かない。

ジャン・ジャックは気だるそうに立ち上がり、ガインをぼんやり眺めながら、ひとりごちる。


「俺とお前の正義、上回ったのは俺だ。俺はこれからも騎士を殺す。聖騎士を殺した殺人医師こそが、真の正義だ。」


暗い瞳の奥には、寂しげな狂気の色がある。


「お前たち騎士はいつもそうだ。傲慢に振る舞うことを正義だと言って、弱い者を踏みにじる。だから俺みたいな奴が生まれるんだ。お前らに踏みにじられた俺は、お前らみたいな持ってる奴が許せないんだ。なあ、わかるか?」


沈黙のガインは、当然、何も答えない。


「最近じゃあな、持ってる奴なら誰でも殺したくなるんだ。お前らは親を持つ子をどう思う?俺は自分のルーツ、親すら知らないんだ。」


「…己には、生き別れた母がいた。」

「…ほう。」


ガインは、自由が効かない四肢に鞭打って、立ち上がる意志を見せた。

地面に掌をつき、曲げた腕を伸ばすガイン。

そして片膝を立て、その立てた膝に掌を重ねる。

そのまま腕に力を入れ、中腰の体勢へ。

さらに体を起こし、ついには完全に立ち上がる。


「己が故郷に戻ると、母は既に死んでいた。」

「仲間が蘇生させたんだろう?」


意識が朦朧としているのだろう、ガインは目の焦点が合っていない。


「己には義妹がいてな。」

「義妹?超人勇者か。」

「己はあの子と永遠に向き合わねばならん。」

「…何の話だ?」

「己はあの子の母親を殺したんだ。」


尚も焦点の合わない目。

ガインは血走った目をジャン・ジャックの方へ向け、ふらり、ふらりと近づいて行く。


「だから、己が自分の母を甦らせることなんて、出来やしない。」


ガインは、ジャン・ジャックの胸ぐらを掴んで、その顔を拳の射程内に捉える。


「己は…!己の正義執行は…!」


拳を握るガイン。


「人の道を外れた人と、人ならぬ道を征く魔物全てを裁くものだ…!」


ジャン・ジャックは穏やかな表情でガインの顔を見つめる。


「だから(おれ)は、最後には己自身を、あの子に裁かせてやらねばならん。」

「それもエゴだぞ。単なる、お前の。」

「それでも己には、これが正義だ。だから、己は死ねんし、前へ進むしかないのだ。」

「わかった。お前はそうしろ。」


迫るガインの凶撃に、ジャン・ジャックは微笑んだ。

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