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お互いの不愉快

「思えば」


 泥島は真顔で喋り出した。

 ぼやきがちな泥島の顔は、普段は困惑していたり、疲れた表情であることが多い。

 だが、戦う時は、怒りの表情で相手を睨み付ける。

 この時の泥島もそうだ。

 真剣そのもので、卑屈な表情には程遠く、強者の雰囲気を纏っていた。

 その怒りはまず、泥島自身に向いた。


「俺はお前から逃げたんですよね」


 眉間に皺を寄せた泥島の目付きは、悪意すら孕んでいるかの様な険しさで、並みの者ならばそれだけで萎縮して動けなくなってしまうだろう。

 しかしレインは涼しい顔で、むしろおどける様に肩をすくめた。


「今回も逃げて下さればありがたいのですが」


 その言葉は、泥島との戦闘を回避したがってるかの様で、その実、油断なく完全に戦闘態勢に入っている。

 それを肌でかんじつつ、泥島は更に己の意思を吐露する。


「そうはいかないんですよ。 何か色々許せないですし、今回はお前をブッ飛ばします」


 レインから逃げた自分への怒りと同時に、何だか余裕がある態度でおどけるレインが不愉快だったし、痛い目見せてやろうという気持ちが沸々と沸き上がって抑えられなくなりそうだったからだ。

 泥島なりの宣戦布告。

 対するレインは戦いを回避するつもりはないが、明確に何が許せないのかを言わない泥島に少しムッとした。

 ぞんざいに扱われたとかんじ、苛立った部分もある。

 レインはレインで、名門の育ち故に、泥島の雑な言葉が不愉快なのだ。

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