中途半端な正義感
「何も知りませんね。 それがどうかしましたか?」
涼しい顔のレインは、薄い関係性のあずみを何とも思っていない。
それ故に“何も知りませんね”という言葉が口からついて出た。
レインの言葉に他意は一切ない。
ただひたすらに、正直にあずみとの関係性のなさを吐露しただけなのだ。
だが、あずみとレインがそういった薄い関係性であることを泥島は知らない。
泥島が知るあずみは色々とイタいが、どことなく繊細な部分があるのも見える女の子、だ。
あずみが忍者に憧れなりきっているのは、何らかのこだわりがあるとも薄々気付いている。
だからこそ泥島は、あずみにとっての忍の里が最高の居場所になればいいなと思えたし、あずみを受け入れてくれていそうな忍たちに、敵対したとしても好感を持っていた。
だがそれをレインの一言が壊した。
泥島はあずみを友だちだと思って気にかけているのに、敵のレインがあずみをぞんざいに扱う様な発言をしたのだ。
それは泥島にとっては不愉快極まりないこと。
「どうもしないよ」
「そうですか」
「お前ちょっとうるさいよ」
「そうですか」
泥島とレインのやりとりは、立場の違い、服部あずみに対するスタンスの違いが明確にあらわれていた。
泥島はあずみに仲間意識があり、レインはあずみに対する意識が稀薄だ。
故に泥島にとってレインの言葉がいいものになるはずがない。
だが、レインに怒りを募らせる泥島の真剣味は、服部あずみにとっては意気をかんじるもの。
(泥島の奴、何だかんだ言って頑固で歩みを止めないでござる。 ……拙者も自分の心のままに動いた以上は!)
中途半端な正義感から咄嗟に行動してしまったあずみであったが、泥島の感情に触れて決意する。
「泥島! その女子助けるまでは、拙者助太刀するでござる! その後は分からんでござるけど!」
迷って立ち止まるのではなく、とにかく行動の結果を今の自分の道に定める。
あずみなりの中途半端な正義感のままで。




