俺じゃ守り切れん
その隙を逃すユウではない。
小さな手首の返しであずみの体勢を大きく崩す。
それは剣技において、ユウとあずみに天地ほどの技術差があることを示している。
(この魔物、強くとも大した巧さはないな)
余裕と落胆の複雑な気持ちで、ユウはあずみの腹に前蹴りを炸裂させた。
とてつもない馬力で蹴られたあずみは真っ直ぐ後ろへ飛ばされる。
その後方、直線上には動かぬカワベがいるが、その前にいる幾人もの忍が、吹っ飛ばされたあずみの体躯を受け止めた。
「大丈夫か、あずみ!」
「大丈夫でござ……」
その間にユウは肉の壁を突破して、カワベの眼前まで迫っている。
けたたましい金属音が鳴り響き、黒貨に火花が散った。
だが、先刻の様に真っ二つにはならない黒貨。
ユウの剣撃を凌ぎ、カワベを守ったのだ。
そして黒貨を操る術者レインがユウの側方へ陣取り、足裏での蹴りを繰り出した。
長い足がユウの頭部を蹴り抜かんと伸びるが、既にそこにユウの姿はなく、レインの脇腹から血が吹き出す。
「!」
間髪入れずまた金属音。
レインが見るとユウはカワベの真後ろで剣を振るっており、その剣筋は首まっしぐら。
だがそこにはジャービル。
炎立ち上る手刀でユウの剣を止めたのだ。
「俺じゃ守り切れん! エタース、お前も動け!」
一撃受け止めただけでユウと己の力の差をかんじ取ったジャービルは焦りから叫んだ。
ネネクレアを肩に担ぐエタースは、そのままネネクレアを肩上にキープしたまま、残った側の腕で匕首を構えんとして驚いた。
何故ならば、そのすぐ近くまでタツキが迫っていて、力いっぱいの抜剣を見せたからである。




