悪薬
「何をした…?」
体の動きが極めて鈍く、ゆっくりと起き上がるガイン。
「ちっ、効いちゃいないのか…。化け物め…。」
忌々しげに呟くジャン・ジャックは、潰れた胸が陥没している。
折れた骨が肺に突き刺さり、穴が開いている。
息が浅く、顔色が青い。
瀕死だ。
片やガインは、ダメージ自体はさほどない。
酩酊しているかの如く、ふらついてはいるが。
「致死量を遥かに超えた薬の量でそれか…。」
目を閉じるジャン・ジャック。
脳内麻薬を意図的に分泌し、辛うじて動かせる左手を胸の上に置く。
「中位回復魔法…。」
胸に光が吸収され、陥没部位が膨らむ。
ぐしゃぐしゃに砕けた胸骨が治ったのだ。
「中位回復魔法。」
もう一度胸に光が吸収され、ジャン・ジャックの顔に赤みがさす。
肺の穴が塞がり、新鮮な空気を取り込める様になる。
「中位回復魔法。」
念押しの三回目。
ほぼ完全回復だ。
ガインは、ゆっくりと近付いて来る。
ジャン・ジャックは嫌悪感剥き出しで呟く。
「もう歩けるだと。こんなバカな話があるか。さっさとくたばれ。」
「己は貴様なんぞにやられはせんぞ、殺人医師!」
「…その名で呼ぶなと言っているだろう。汚らわしい化け物が。ありったけをくれてやるからすぐに死ね。お前の仲間も探し出して殺して、魂を救ってやる。先にあの世へ行っていろ。」
抜き手でガインの横腹を突き刺すジャン・ジャック。
「食らえ。悪薬。」
ジャン・ジャックの体全体から白い靄の様なオーラが立ち上り、ガインの横腹に吸い込まれて行く。
「おのれ不覚…!未熟な練気に見せかけた薬気とはな…!」
「ふん、油断したな、聖騎士ガイン。しかし、まだ喋れるのか。即死の毒のはずなんだがな。」
ジャン・ジャックは抜き手をガインの体から抜き出し、ふらふらと離れ、へたり込む。
そしてガインは再び、前のめりに倒れた。




